Amazon ECSとは?基本知識から使い方まで解説

公開日:2025年3月25日最終更新日:

近年注目されている開発技術として、コンテナと呼ばれるものがあります。アプリケーションを効率的に開発する手法であり、既に利用している人もいるかもしれません。

コンテナを運用できるサービスはいくつも存在しますが、AWSで実現する手法としてAmazon ECSがあります。これを活用することで、コンテナ管理を効率化でき、開発者はリソースを意識することなく、開発業務に取り組みやすくなるのです。今回は、Amazon ECSの基本的な機能や料金体系、メリット、そして近年続いているアップデートについて、それぞれ解説します。

Amazon ECSとは

Amazon ECSは、Amazon Elastic Container Serviceの略称で、Dockerコンテナの実行や停止などをAWS上で実現できるフルマネージドサービスです。コンテナオーケストレーションサービスと呼ばれるものに該当し、コンテナを簡単に運用できるようになっています。

これまでコンテナを運用する際は、仮想サーバー上にコンテナを動かすための専用アプリケーションを構築する必要があり、運用も管理も手間のかかるものでした。

その点、Amazon ECSを利用すると、このような手間をかけることなく、必要最低限の知識だけでスムーズにコンテナの運用ができるようになります。

仮想サーバーではなくコンテナへと切り替えることによって、リソースを効率よく活用しながら、複数の環境も同時に維持できるようになっています。

そもそもコンテナとは

システム開発における「コンテナ」とは、アプリケーションとその依存関係をひとつの環境にまとめて動作させる技術です。DockerやKubernetesなどのツールを利用し、OS上で軽量な仮想化を実現します。

コンテナのメリット

コンテナを活用することで、以下のメリットを享受することが可能です

  • 環境の統一:開発・テスト・本番環境で動作が統一され、環境依存の問題を軽減できる
  • 軽量で高速:仮想マシン(VM)よりも起動が速く、リソース効率が高い
  • スケーラビリティ:AWSのリソースで自動スケールが可能

一般的に、コンテナは仮想マシンよりもリソース効率が高いと考えられています。そのため、今までは仮想マシンが主流でしたが、現在はAWSなどでもコンテナが積極的に利用されるようになっています。

コンテナオーケストレーション

コンテナについて理解を深めるためには、コンテナオーケストレーションと呼ばれる仕組みの理解も必要です。これは、コンテナ化されたアプリケーションを効率的に管理するためのツールやシステムを指します。本来、コンテナは使用者が手動で管理しなければなりませんが、コンテナオーケストレーションを活用することで、デプロイやスケーリングなどを自動化できます。

Amazon ECSは、このコンテナオーケストレーションに該当します。「コンテナを提供するサービス」と理解しても差し支えありませんが、正確にはコンテナオーケストレーションとして理解できると良いでしょう。

コントロールプレーンとデータプレーン

コンテナは、コントロールプレーンとデータプレーンと呼ばれる二つの仕組みから構成されています。

まず、コントロールプレーンは、クラスターの管理を担う部分を指します。Amazon ECSには、クラスター、サービス、タスク、タスク定義という機能が存在し、これらを組み合わせることによって、効率的にコンテナをデプロイ・管理できるようになっています。

そして、データプレーンは、コンテナを実行するリソースやストレージを指します。Amazon ECSでは、3つの環境でコンテナを実行できるようになっており、それぞれ以下で解説するものです。

Amazon ECSのデータプレーンによる違い

解説した通り、Amazon ECSでコンテナを動かすためのデータプレーンは3種類から選択できるようになっています。これらの違いや、どのように選択すればよいのかについて理解していきましょう。

Fargate

Fargateは、コンテナに特化したサーバーレスコンピューティングエンジンサービスです。サーバーレスアーキテクチャを構成するサービスがいくつも存在しますが、コンテナに特化している点が特徴です。

サーバーレスコンピューティングエンジンであるため、ユーザー側でサーバー管理の細かな部分を意識する必要がありません。例えば、バージョンアップやパッチ適用などを考慮する必要がなくなります。言い換えると、一定の制約を受けることにはなりますが、サーバーの管理が不要になる点は大きなメリットだといえるでしょう。常に同じ環境で、大量のコンテナを実行しやすくなります。

なお、標準状態ではホストやコンテナに対してSSH接続ができません。事前に設定が必要となるため、自分で細かな部分まで操作したい場合は、少々初期設定が複雑になってしまいます。

ECS on EC2

サーバーレスコンピューティングではなく、EC2インスタンスを用いてコンテナを運用する方法です。EC2そのものにアクセスできるため、ユーザー自身でミドルウェアやOSのパッチ適用などのサーバー管理ができます。Fargateでは実現できない環境も、EC2ならば自分で構築できることが特徴です。

ただし、言うまでもなくサーバーの管理が必要となるため、台数が増えてくると大きな負担になりかねません。Fargateでは実現できない特定の環境を構築する際にのみ、EC2を選択するのが適切でしょう。

ECS Anywhere

ECS Anywhereは、AWSのリソースにコンテナを構築するのではなく、オンプレミス環境上にコンテナを起動する仕組みです。ECSを用いて、AWSの管理機能を活用しながら、オンプレミスでコンテナを運用できます。少々特殊な使い方であるため、ここでの詳細は割愛します。

Amazon ECSの構成要素

Amazon ECSは4つの要素から構成されています。

タスク定義

タスク定義は、以下で述べる「タスク」の詳細を定義する機能です。以下の内容を定義しておくことによって、どのようにコンテナを構築するかを制御できます。

  • ● コンテナ定義
  • ● タスクサイズ
  • ● ポートマッピング
  • ● 起動タイプ

まず、コンテナ定義では、どのイメージを用いてコンテナを作成するかを決定します。そして、タスクサイズでは、それらのコンテナに対してCPUやメモリをどれだけ割り当てるかを設定します。また、ポート番号を指定したい場合は、ポートマッピングで設定できますが、基本的には自動的に割り当てられるポートを利用すると良いでしょう。そして、起動タイプは、上記でも解説したデータプレーンに該当する部分です。どの環境を利用するかによって、サーバー自体を管理する必要があるかどうかが変化します。

タスク

タスクは、上記で解説したタスク定義を用いて起動されたコンテナを指します。1台だけコンテナを起動することもあれば、複数台のコンテナを起動することも可能です。なお、タスクの実行状況は以下で解説するサービスによって管理されます。もし何かしらトラブルが発生した場合などは、サービスの定義によってタスクが再実行される仕組みです。

サービス

サービスは、実行中のタスクを管理する役割を持ちます。主にタスクの数を管理し、トラブルにより停止したタスクがある場合は、自動的に再起動する役割を担うのです。コンテナは必要な台数を起動し続けることが一般的であるため、タスクの数を維持するためにサービスが必要となります。

また、タスクの数を管理するだけでなく、ロードバランサーによる負荷分散やタスクを管理するためのネットワーク設定なども可能です。

クラスター

クラスターは、サービスやタスクを動かすための基盤となる役割を持ちます。事前にクラスター名を指定でき、クラスター単位で論理的に独立したコンテナ環境を構築できます。

例えば、クラスターAとクラスターBを設定した場合、それぞれのクラスターで実行されるコンテナは、論理的に別の環境として扱われます。そのため、開発環境と検証環境など、環境を分けて運用したい場合に重宝します。

Amazon ECSを採用するメリット

Amazon ECSのメリットを解説します。

スムーズにコンテナを導入できる

Amazon ECSを活用することによって、スムーズにコンテナを導入できることがメリットです。本来、コンテナを導入するためには、自分自身でDockerなどのアプリケーションを設定しなければなりません。また、設定するための基盤となるサーバーの準備も求められます。しかし、Amazon ECSを利用すれば、これらの作業はほとんど必要ありません。EC2を利用する場合は多少の設定が必要となるものの、コンテナ構築の負担は大きく軽減されます。

処理が最適化されている

AWSが標準で提供するコンテナサービスであり、処理が最適化されていることがメリットです。オーバーヘッドが可能な限り削減されており、全体として処理が高速です。

また、Amazon ECS自体の処理も高速ですが、Fargateとの組み合わせも最適化されています。そもそも、サーバレスアーキテクチャは処理を高速化しやすいですが、FargateはAWS内部でコンテナの起動に最適化されているため、より高速なコンテナ起動・運用が期待できるのです。

Amazon ECSの使い方

最後にAmazon ECSを起動する場合の使い方を簡単に紹介します。

クラスターの起動

Amazon Elastic Container Serviceのコンソールへアクセスし「クラスター」をクリックします。

「クラスターの作成」をクリックします。

クラスター名やインフラストラクチャを指定します。

画面が切り替わり、指定したクラスターが作成されます。

タスク定義

続いてタスク定義から「新しいタスク定義の作成」をクリックします。

タスク定義の名称やインフラストラクチャの設定を入力します。

コンテナの設定も入力し、ページ下部の「作成」をクリックします。

これによりタスク定義が完了し、コンテナを起動できるようになります。

まとめ

Amazon ECSは、AWSが提供するコンテナサービスです。これを活用することによって、効率的にコンテナを起動したり運用したりできます。サーバレスコンピューティングエンジンにも対応しているため、必要な環境をスムーズに構築することが可能です。

なお、Amazon ECSはアップデートを繰り返していて、新しいリソースに対応したり、実行できるアプリケーションが強化されたりしています。これからも進化が期待できるため、コンテナの利用時には積極的に活用したいサービスです。

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