公開日:2023年12月18日最終更新日: 2023年12月19日
2023年11月末にAWSはAWS re:Invent 2023を開催しました。毎年この時期に実施されるイベントで、AWSの最新情報が公開されます。今年も様々な情報が公開され、AWSのサービス向上が告知されました。
それらの中でも、注目してもらいたいのは、AIに関連するサービスの進化です。今回は、AWS re:Invent 2023で公開された情報について、それぞれの概要を解説します。
目次 <Contents>
AWS re:Invent 2023で公開されたAIの最新情報
AWS re:Invent 2023では、多くのAIサービスが公開されたため、それぞれについて解説していきます。
Retrieval Augmented Generation (RAG) with Knowledge Base
フルマネージド型AIサービスのAmazon Bedrockで、簡単にRAGを実装できるetrieval Augmented Generation (RAG) with Knowledge Baseの一般公開がアナウンスされました。2023年9月の段階では、特定のユーザーだけプレビュー版として利用できましたが、今回のアナウンスによってすべてのユーザーへと開放されます。
ただ、対応しているリージョンは現時点で2つであり「US East (N. Virginia)」「US West (Oregon)」のみです。日本を含むその他のリージョンでは一般公開されていないため、利用したいと考えるならば、これらのリージョンでAmazon Bedrockを構築する必要があります。
なお、Knowledge Baseを使用しても個別に料金が発生する仕組みではありません。Amazon Bedrockは、モデルの生成やトークンごとに料金が発生するようになっているため、これらのアクションが生じた際に料金が発生する仕組みとなっています。もし、OpenSearch Serverlessを利用するならば、こちらの設定や料金も考慮しなければなりません。
Agent for Amazon Bedrock
上記と同様にAmazon BedrockでRAGを簡単に構築するためのサービスとして、Agent for Amazon Bedrockがアナウンスされました。内容を要約すると、今までエンジニアがRAGに関連して手動で構築していた部分を、Agent for Amazon Bedrockによって自動化できるとのことです。つまり、Lambdaを利用した自動化など、実行や運用をよりサポートしてくれるサービスであると理解すれば良いでしょう。
実際に公開されたサービスを閲覧してみると、「US East (N. Virginia)」「US West (Oregon)」では設定できるようになっていました。大まかな設定内容はエージェント用のIAMロールを設定したりKMSキーを設定したりした後、特定のモデルを選択することでエージェントを生成できるというものです。なお、現状は以下のモデルを選択できます。
Anthropic
- Claude Instant V1
- Claude V2
- Claude V2.1(coming soon)
Amazon
- Amazon Titan Express(coming soon)
一部のモデルはこれから公開されるとのことで、現時点では3種類だけが選択できるようになっていました。ここでモデルを指定して「Instructions for the Agent」にエージェントへの指示を入力することで、必要なAIエージェントが生成されます。
なお、上記で解説した「Retrieval Augmented Generation (RAG) with Knowledge Base」を設定していれば、エージェントの生成にあたって、ナレッジベースを指定できます。もし、事前に文書ファイルなどを用意でき、それをAIに反映したいと考えているならば、それぞれ設定するようにしましょう。
Amazon Q
Amazon Qは、AIを利用したアシスタント機能で、ビジネスでの利用を想定しています。主に利用される機能としては「会話によるQ&A」だと考えられますが、ソースコードリポジトリと接続することで、自動的にソースコードを生成するなども可能です。具体的な使い方については、Amazon Qの公式ページなどでユースケースが紹介されているため、それらも参考にしてみると良いでしょう。
なお、想定されている用途は「個別にカスタマイズされたAI」ですが、現時点でAWSがカスタマイズしたAmazon Qを気軽に利用できます。コンソール画面から実際に利用すると以下のとおりです。
このように、コンソール画面の右側に起動ボタンが用意されていて、こちらをクリックするだけで簡単に起動できます。例として掲載されている質問をクリックすると、以下のように回答が得られます。
なお、重要なポイントとして、現時点では英語にしか対応しておらず日本語での質問はできません。英数字と所定の記号だけで質問するように指摘されます。今後は日本語に対応すると考えられるため、日本語で利用したいならばその時を待ちましょう。
Amazon Q in Amazon Quicksight
上記で紹介したAmazon Qの追加サービスとして、Amazon Q in Amazon Quicksightと呼ばれるものもアナウンスされています。これは従来も存在していた「Amazon Quicksight Q」にアドオンでAIの力を追加したものだとイメージすると良いでしょう。実際「データストーリー」 と 「エグゼクティブサマリー」がダッシュボードの機能として追加されました。
まず、データストーリーは必要とする情報について文章で記載することで、それに適した情報をストーリー形式で示してくれるものです。例えば「登録者数の変化についてエリア別・男女別に分析した傾向を示してください」などと指定すると、AIがその内容を理解してストーリーを生成してくれます。スライドであれば、数ページの資料を生成し「ストーリー形式で説明できる状態」まで牽引してくれるのです。部分的に修正することが大半ですが、そのままでも十分に資料として役立てられます。
また、エグゼクティブサマリーは、ダッシュボードに複数のビジュアルやシートが存在する場合、これらをまとめて表示してくれる機能です。複数の情報が混在すると、どこにどの情報があるのか把握しづらくなってしまいます。しかし、エグゼクティブサマリーで表示するとひとまず一覧化されるため、情報を見つけやすくなるのです。
Amazon DataZone AI recommendations
Amazon DataZoneはAWSが提供するデータを管理するためのサービスです。これにAIがアセットの概要やスキーマのカラム名などを自動的に生成してくれる機能が追加されています。本来は、ユーザがこれらの情報を入力する必要がありますが、AIが内容を読み取って、適切な値を設定してくれるようになったと考えましょう。また、コンシューマーがデータを発見しやすくするための機能も追加されています。
基本的に、今までAmazon DataZoneを利用しているならば、特別な用意は必要とされません。テーブルへとアクセスできるように権限を付与し、まずはデータを集約するようにします。その後「データソースの作成」の際に「自動的なビジネス名の生成」とのオプションを有効にすることで、自動的に必要な情報が入力されるようになるのです。
なお、現時点では英語でしか文章が生成されないため、概要やカラムの説明が入力されても、英語で検索することが求められます。これらの情報が追加されることで、効率よく検索できるなどの効果がありますが、運用には注意したほうが良いでしょう。
ただ、英語しか対応していないものの、データの内容を踏まえて、非常に精度の高い文章を生成してくれています。部分的に手直しすることは避けられないかもしれませんが、同様の文章を人間がすべて入力することを考えると、大きな効率アップにつながるはずです。
AWS Trainium2
AWS Trainiumは、AWSがディープラーニングのトレーニング向けに提供する、機械学習のアクセラレーターです。機械学習用にカスタマイズされたサービスとなっていて、このインスタンスを活用することで、効率よくディープラーニングを実現できます。
現時点でも、AWS Trainiumは提供されていますが、今回は従来に比べて4倍の速度で動作するAWS Trainium2がアナウンスされました。最大、100,000チップのEC2 UltraClusterに導入することによって、非常に多くのパラメータを持つモデルの学習でも効率よく処理できるようになるのです。時間が短縮できることで、実質的にコストの削減にもつなげられます。
ただ、アナウンスされたものの、AWS Trainium2を利用できるインスタンスについて具体的に発表された訳ではありません。現時点では「Trn1インスタンス」が提供されているため、これがバージョンアップして提供されるようになるでしょう。
まとめ
AWS re:Invent 2023で発表された情報の中でも、AIに関連するものをピックアップして紹介しました。AWSはAIの活用に力を入れ、新しいサービスが次々と登場しています。現時点ではプレビューであり、一部の機能しか公開されていないものはありますが、さらなる発展に期待できるでしょう。
また、解説したように、全てのユーザー向けに解放されたAIサービスもあります。積極的に採用することで、AWSをさらに活用できると考えられるため、プレビュー版を含めて、積極的に触ってみてください。