公開日:2022年3月8日最終更新日: 2022年3月8日
近年は5Gが急激に注目されています。まだまだ普及しているとはいえない状況ですが、個人で利用するスマートフォンなども5Gに対応し身近になっています。
今回はAWSで5Gを活かすために「AWS Wavelength」と呼ばれる機能を利用し、5Gネットワーク下でアプリケーションを動作させる方法をご説明します。
目次 <Contents>
AWS Wavelengthの概要
まず最初に、AWS Wavelengthとはどのようなサービスであるのかを説明します。
そもそも5Gとは
5Gは新世代の通信規格を指しています。第5世代移動通信システムと呼ばれるもので、スマートフォンのみならず多くの通信機器に利用される規格です。
注目ポイントとして、現在利用されている4Gと比較して「大容量通信、低遅延での通信が可能」などが挙げられます。現在の通信も十分に高速ですが、さらに高速な通信が5Gでは実現できるのです。これにより、今まで以上にネットを活用した機器や設備が開発できるようになります。
AWS Wavelengthとは
AWS WavelengthはAWSで5Gを利用するためのサービス名称です。5Gのネットワークサービスは通信会社大手のKDDIが提供していて、AWSはKDDIのネットワークを利用させてもらっている状況です。
ただ、KDDIのネットワークは利用していますが、AWSのコンソールから基本的な操作は可能です。AWS Wavelengthの利用者はKDDIのネットワークを利用していることを意識することなくAWS上でネットワークやサーバーなど、アプリケーションのインフラ構築ができます。
なお、AWS Wavelengthは全てのリージョンで展開されているサービスではありません。日本では東京・大阪と展開されていますが、リージョンによってはAWS Wavelengthが利用できません。これから対応地域は拡大していくと考えられますが、日本以外のリージョンも含めたシステム構成を考える際は注意が必要です。
AWS Wavelengthで提供されるサービス
AWS Wavelengthでは全てのサービスが利用できるわけではなく「EC2」「RDS」「ストレージ」など一部の機能に限られています。AWSには数多くのサービスがありますが、5Gに対応しているものは限られているのです。そのため、AWS Wavelengthで提供されていないサービスは4Gで利用するしかありません。
ただ、同じリージョン内であればAWSのバックグラウンド通信は高速化されています。インターネットに公開する部分を5Gにしておけば、最低限の遅延でアプリケーションを動作させられます。
AWS Wavelength導入によるメリット
AWS Wavelengthを導入するとどのようなメリットが期待できるのかをご説明します。
1. 遅延の無いサービス提供
5Gは高速で低遅延が魅力の通信規格です。そのため、AWS Wavelengthを導入することで遅延のないネットワークサービスが提供できます。若干の遅延はありますが、ほぼ遅延が無いと考えて良いでしょう。
現在はアプリケーションの高速化がユーザーから期待されています。AWS Wavelengthを利用すれば、ネットワーク面でのボトルネックを最小限に抑えられるのです。
2. コストの低減
今までは通信速度をカバーするため、オンプレミスにしたりハードウェアやソフトウェアで処理の高速化を図る必要がありました。ネットワークに遅延が発生する可能性があるため、それ以外の要素で高速化するような仕組みを構築する必要があったのです。ただ、これには多くの投資が必要となりコスト負担が大きかったのです。
それに対し、AWS WavelengthはAWSの利用料を支払うだけでアプリケーションの高速化が実現します。今までのようにアプリケーションの高速化なども必要とはなりますが、必要以上にサーバースペックなどでカバーする必要はありません。
3. 柔軟なスケーラビリティ
AWSが提供するサービスのため、スケールの変更が簡単です。必要に応じてサーバーの台数を増やすなどの対応ができます。利用のピークが変動するようなシステムは、ピーク時のみサーバー強化ができます。
いくら5Gに対応しても、サーバーへのアクセスが集中して処理が遅延していては無意味です。AWS WavelengthとAWSが持つスケーラビリティを組み合わせれば、低遅延のアプリケーションを効率よく実現できます。
AWS Wavelengthを構築する流れ
実際にAWS Wavelengthを構築する流れを画面と共にご案内します。
1. ネットワークの有効化
1AWSにログインし、Amazon EC2 ダッシュボード画面を表示して、「アカウント属性 > 設定 > ゾーン」をクリックします。
2Zone Groups の下の「管理」をクリックします。
3「ゾーングループを管理」画面が表示されるので、ラジオボタンで「有効」を選択し、「ゾーングループを更新」をクリックします。
4画像のとおり有効化されていたら、適切に設定されています。
2. VPCの作成
続いて、VPC ダッシュボード画面でVPCとサブネットを作成します。
1VPC画面で「VPCを作成」をクリックします。
2名称やCIDRは構築する環境に応じて適切な値を入力します。
入力が完了したら、ページ下部の「VPCを作成」をクリックします。
3サブネット画面の「サブネットを作成」をクリックします。
4サブネットを作成するVPCは上記で作成したVPCを選択します。
アベイラビリティーゾーンは5Gを示す「アジアパシフィック (KDDI) – 東京 / ap-northeast-1-wl1-nrt-wlz-1」を選択します。
5CIDRに適切な値を入力し、下部の「サブネットを作成」をクリックします。
6キャリアゲートウェイ画面の「キャリアゲートウェイの作成」をクリックします。
7表示画面で名前を入力し、キャリアゲートウェイをアタッチするVPCに先程作成したものを選択します。
「サブネットトラフィックをキャリアゲートウェイにルーティングする」のチェックを入れます。
表示された Wavelengthゾーン内の既存のサブネットには、先程作成したサブネットを指定します。
入力が完了したらページ下部の「キャリアゲートウェイを作成」をクリックします。
8ネットワークの設定が完了すれば、後は実際にアプリケーションなどを動作させるEC2を起動します。
インスタンスの作成画面を起動します(基本的な部分は割愛し、AWS Wavelengthの利用で重要なインスタンスの設定を説明します)。
インスタンスの設定画面では、画像のとおり先程作成したネットワーク・サブネットを指定します。
3. Elastic IPの割り当て
必要に応じてEC2インスタンスの追加設定をし、インスタンスを起動します。最後にCarrier IPをインスタンスに割り当てなければなりません。
1「VPCダッシュボード」から「Elastic IP」を選択し、「Elastic IP アドレスを割り当てる」をクリックします。
2Elastic IP アドレスを割り当てる画面で、ネットワークボーダーグループに「ap-northeast-1-wl1-kix-wlz-1」を指定します。
これで5G用のIPアドレスが手に入ります。
指定後はページ下部の「割り当て」をクリックします。
3IPアドレスの割り当てが完了したら、「アクション > Elastic IP アドレスの関連付け」をクリックします。
4割り当てるインスタンスを選択して「関連付ける」をクリックすれば作業完了です。
AWS Wavelengthを利用してEC2が5Gネットワーク環境下で公開されました。
まとめ
これからは5Gの時代がやってくると考えられます。まだまだ導入している企業や個人は少ないですが、これから広がってくるでしょう。
しかし、AWS Wavelengthを使いこなすのもまだまだ難しい状況です。5Gが普及しておらず事例が少ないため、どのように活用するのが正解か見えてこないのも不思議ではありません。
AWSという気軽に利用できるクラウドサービスで5Gを体験できるため、先を見据えて知っておいて損はないでしょう。