公開日:2022年3月22日最終更新日: 2022年5月13日
現在は多くの企業がBCP対策に取り組むようになっています。一昔前までは「大企業が取り組むべきもの」との印象が強くありましたが、認識は変化してきています。
そして、このBCPについて考えるにあたり重要となるのがクラウドの存在です。今回はBCP対策の概要となぜBCP対策でクラウドが選択されるのかについてご説明します。
目次 <Contents>
そもそもBCPの概念と対策について
BCP対策とは耳にするものの、具体的にどのようなものか理解できていない人も多いようです。クラウドとBCP対策の関係を説明する前に、BCP対策とは何かについてご説明します。
BCP対策の概要
BCPは「Business Continuity Plan」の頭文字を取ったもので事業継続計画と翻訳されます。災害など万が一のトラブルが起きた際に、可能な限り事業を続けられるような手法を取り決めしておくことです。
一般的に事業が停止してしまうと、それだけ損失を受けてしまいます。また、期間が長くなればさらに損失は大きくなります。これを最小限に抑えるために、BCPとの考え方があるのです。
BCP対策が求められる理由
BCP対策が改めて注目されているのは、大雨や地震など自然災害の多さです。特に日本は自然災害が多く、万が一に備えておくべき状況になっています。
自然災害に遭っても、災害の影響を受けていない企業は事業を継続しています。そのような状況で事業が停止すると、悪影響を受けるのは言うまでもありません。事実、日本は自然災害が多いため、他国よりもBCP対策が求められています。
オンプレではなくクラウドを選択すべき4つの理由
BCP対策はデータセンターを契約しオンプレミスで構築するのが主流でした。しかし、時代は変化し現在はクラウドの活用が増えてきています。
続いてはオンプレミスではなくクラウドを選択すべき理由を4つご説明します。
1. 遠隔地にデータを保管できる
クラウドを利用すれば、遠隔地でのデータ管理が簡単となります。主要なクラウドサービスは世界中でサービスが提供されているため、これらを活用できる点がメリットです。
BCP対策は災害などに備えて遠隔地にデータを保管するのが基本です。例えば首都圏から関西や九州など地理的に離れたデータセンターへバックアップを送信しておきます。そうすることで、万が一首都圏が被災しても遠隔地にあるデータで業務継続や再開したりできます。
クラウドサービスを利用すると、「遠隔地」の幅が広がります。日本のみならずアメリカなど世界中が候補に挙がるのです。オンプレミスよりもデータを保管する地域が広がるのは、クラウドの大きなメリットです。
2. バックアップの取得が可能
大半のクラウドはデータのバックアップに対応しています。一部設定が必要となる場合はありますが、標準的な機能として提供されています。
BCP対策では多くのデータをバックアップしなければなりません。データベースの内容はもちろん、仮想サーバーのストレージもバックアップが必要です。障害に備えて適切なバックアップ設計をしなければならないのです。
本来は細かな設計が必要ですが、クラウドを利用すればBCP対策を見据えたサービスが提供されています。標準のサービスを活用するだけでバックアップの構築が可能となり、設計や構築の負担を大きく軽減できます。
3. データセンターの可用性が非常に高い
利用するクラウドにもよりますが、多くの可用性は99.99%以上です。オンプレミスでは難しい可用性をクラウドならば実現してくれます。
これほどまでに可用性が高いのは、複数のデータセンターを組み合わせてサービスが提供されているからです。他のデータセンターで障害が起きても、 ユーザーには感じさせない設計で可用性を高めています。
4. コストを抑えやすい
クラウドを利用すればBCP対策に必要なコストを抑えられます。イニシャルコストもランニングコストの両方を抑えられる点は、オンプレミスではなくクラウドを利用するメリットです。
イニシャルコストを抑えられる理由は、オンプレミスのようにデータセンターの契約やサーバーの購入が必要ないからです。サービス提供会社が保有する資産を利用するため、多くの資金を投じて自分で資産を確保する必要がありません。
また、ランニングコストを抑えられる理由は、データセンターやサーバーの維持コストが異なるからです。オンプレミスよりも少ない負担で済み、これがコストに反映されます。
BCP対策にクラウドを選択する場合の3つの注意点
BCP対策にクラウドを選択する際には注意点があります。続いてはこちらについてもご説明します。
1. ネットワーク遮断の可能性がある
クラウドはインターネット経由で利用するものであるため、ネットワークが遮断されると利用できません。幅広い場所からアクセスできる反面、ネットワークが遮断されると身動きが取れなくなります。
どのようなネットワークが影響してくるかはBCP対策の設計に左右されます。一般的なインターネットが影響することもあれば、専用の回線が影響することもあります。また、特定のプロバイダを利用している場合のみ遮断の影響を受ける可能性もあります。
ただ、ネットワークが遮断されるような状況に陥ると、オンプレミスにもサーバーに接続できなくなります。規模の大小はありますが、BCP対策をしていてもネットワーク遮断に対応するのは難しいのです。
2. 適切な設計が求められる
クラウドを利用したBCP対策は適切な設計が必要です。とにかくクラウドを利用すれば良いというものではなく、BCP対策を考慮したネットワーク設定やサーバー設計が求められます。
基本的な機能を活用するだけで、ある程度のBCP対策はできます。例えば自動的にデータベースのバックアップなどを取得できると説明しましたが、このような機能があるため「クラウドを使うことでBCP対策ができている」と考えてしまうのも不思議ではありません。
しかし、これはあくまでもBCP対策に利用できる機能に過ぎません。その機能をどう活用するのかは設計で決めなければなりません。
3. マルチクラウドを検討する
できるだけマルチクラウドを導入するようにしましょう。マルチクラウドとは、AWSとAzureなど複数のクラウドを組み合わせることです。
複数のクラウドを組み合わせると、どちらかに障害が起こっても業務が継続しやすくなります。つまり、BCP対策としてより効果を発揮できるようになります。
クラウドでも障害が起こる可能性はあるため、リスクは分散しておくに越したことはありません。 ただ、マルチクラウドのBCP対策は設計が難しくなります。高いスキルを持ったエンジニアを中心に、適切なアーキテクチャを検討しましょう。
クラウドを利用したBCP設計で主要な3つのポイント
クラウドを利用したBCP設計にはいくつものポイントがあり、その中でも特に意識すべき3つをご説明します。
1. データセンターの位置
データセンターの設置場所を意識しておきましょう。明確には公開されていませんが「日本」「アメリカ」などある程度は公開されています。
物理的に離れたデータセンターを採用すると、BCP対策の効果を発揮しやすくなります。日本で災害が発生しても、海外のデータセンターならば影響を受けないからです。物理的に離しておくことで、リスクヘッジが可能といえます。
注意点として、物理的に離れると通信に時間を要します。システムによっては安定稼働が難しくなるため、そこは考慮しておきましょう。
2. サービスの品質
万が一に備える仕組みであるため、サービスの品質が重要です。BCP環境に切り替えようとした場合に、サービスが起動していなければ意味がありません。
そのため、BCP対策の環境を構築する際は、できるだけSLA(契約者に対するサービスの保証)の高い環境を選択しましょう。同じクラウド内で複数のサービスレベルであれば、費用かかっても高いものを選択すべきです。サービスレベルの低いBCP環境は万が一の備えにはなりません。
3. 構築の手軽さ
BCP対策を構築の手軽さだけで決めるのは賢明ではありません。ただ、構築に向けた足がかりとしては検討しても良いでしょう。
BCP対策は準備に時間を要してしまうことが明白なため、腰の重い企業は多くあります。そのような観点で、クラウドを利用して少しでも手軽に構築ができれば、思い切ってBCP対策へと舵を切れるでしょう。
まとめ
クラウドを用いたBCP対策についてご説明しました。BCP対策は万が一の際も事業を継続するための施策で、災害の多い日本では取り組んでおくに越したことはありません。
BCP対策を講じる際には、可用性に優れたアーキテクチャを提供してくれるクラウドを利用すべきです。一昔前はオンプレミスが中心でしたが、今は時代が変化し、クラウドが多く利用されています。プロの意見を踏まえ、サービスレベルの高いBCP環境を構築しましょう。