公開日:2024年2月2日最終更新日:
AWSにはコストに関するサービスがいくつもあり「AWS Billing and Cost Management」としてまとめられています。それらの中に2023年末「AWS Cost Optimization Hub」と呼ばれるものが追加されました。新しいコストに関するサービスであり、理解できていない人も多いのではないでしょうか。今回はコスト最適化に役立つサービスを紹介します。
目次 <Contents>
Cost Optimization Hubとはどのようなサービスなのか
Cost Optimization Hubとは、AWSでコストを最適化するための推奨事項を一元的に管理するためのサービスです。AWS Organizationsのメンバーアカウントやリージョン全体での横断的なコスト最適化を支援してくれます。複数のアカウントを保有している場合、それぞれでコストを管理する必要がありますが、これらを網羅的に把握できるようになったと考えれば良いでしょう。
今までも、AWSには「Compute Optimizer」「Trusted Advisor」「Cost Explorer」などコストに関連するサービスが存在しました。ただ、これらは独立したサービスであり、一括して細かい状況を把握することが難しかったのです。同じダッシュボードで横断的に確認できるという点で、Cost Optimization Hubは新しいサービスといえます。
Cost Optimization Hubがサポートするリソースの種類
現状、Cost Optimization Hubはすべてのリソースについてコスト管理できるわけではなく、以下のコストに限って管理できます。
- Amazon EC2インスタンス
- Amazon EC2 Auto Scalingグループ
- Amazon EBSボリューム
- AWS Lambdaの関数
- Amazon ECSのタスク(AWS Fargateに限る)
- コンピュータセービングプラン
- EC2インスタンスセービングプラン
- SageMakerセービングプラン
- EC2リザーブドインスタンス
- Amazon RDSリザーブドインスタンス
- OpenSearchリザーブドインスタンス
- Amazon Redshiftのリザーブドノード
- ElastiCacheのリザーブドノード
これらは2024年1月現在の情報であり、これからさらに拡大していくと考えられます。どのリソースがサポートされているかは、AWSの公式サイトで情報を得るようにしてください。
Cost Optimization Hubの有効化方法
具体的にCost Optimization Hubを利用するために、有効化の方法を理解していきましょう。まず、「AWS Billing and Cost Management」のコントロールパネルへとアクセスし、左ペインの「コスト最適化ハブ」をクリックします。
コスト最適化ハブの管理画面が表示されるため、画面右下にある「有効化」をクリックします。
有効化に成功するとデータを収集する旨のメッセージが表示されます。なお、データの収集には最大で24時間が必要となるため、完了するまで待機しなければなりません。初回は時間を要しますが、以降は1日以内に更新が続くため、常に最新の情報を確認できます。
問題なくデータが連携されると、以下のとおり現在の状況について示したグラフなどが表示されます。
なお、コンソールに表示されるポップアップでは、24時間以内に初回のデータが連携されると表示されています。しかし、今回のテストでは機能を有効化してから実際に反映されるまでは5日程度が必要となりました。また、同時に2つのアカウントで有効化してみましたが、どちらについても5日後の確認タイミングでデータが反映されています。利用者の増加に伴い、データの連携が遅くなっている可能性があるため、有効化してからしばらくは待機するようにしてみましょう。
Cost Optimization Hubでのコストや推奨アクションの確認
Cost Optimization Hubを有効化することによって、コストの状況や改善すべきポイントについて表示されるようになるため、それぞれについて確認していきましょう。
推奨アクションの確認
最初に、どのようなアクションが求められているのか「推奨アクション」から詳細を確認しましょう。グラフ形式で表示すると以下のとおりです。
また、グラフではなくテーブル形式でも表示でき、この場合は以下のとおりです。
具体的な金額は伏せていますが、このようにどの部分に問題があり、推奨アクションに沿って行動することでどの程度の改善が見込めるのかが表示されます。今回の環境は、利用しているサービスが少ないため表示されている事項も限られていますが、1つのアカウントで大量のサービスを利用しているならば、それぞれについて細かく表示される仕組みです。
なお、コストの改善については推奨アクションを確認すべきですが、それ以外にもコストに関する統計情報を確認できます。例えば「AWSリージョン」という項目で集計すれば、リージョンごとにどの程度のコストの削減が見込まれるか把握が可能です。また、リソースの再起動が必要であるかどうかが確認できるため、今すぐに対応できるか計画的に対応するかどうかの判断もできます。
加えて、対応すべき状況を把握しやすいように、フィルター機能が用意されています。リージョンやリソースタイプ、自分で設定したタグなどが指定できるため、これらも積極的に活用すると良いでしょう。
削減機会の確認
Cost Optimization Hubのホーム画面には「機会を見る」というボタンが設置されていて、こちらをクリックすることでコスト削減対象となるリソースを詳細に確認できます。例えば、EC2に限った情報であると以下のとおりです。
今回の場合、インスタンスダイブを変更することなどが具体的なアクションとして明記されています。Cost Optimization Hubのホーム画面ではここまで具体的な情報が把握できないため、ボタンをクリックして詳細な情報を確認する方が良いでしょう。
また、示されているリソースのラジオボタンをクリックすると、ページ下部に詳細な情報が表示されます。
詳細な部分まで確認できるようになっているため、対応する必要があるかどうかの判断は、こちらの情報にも目を通してから判断することが大切です。
なお、AWSの公式資料を参考にすると、コストを削減する方法は特定の理論に沿って最も最適なものが示されています。そのため、コスト削減に向けて複数の方法が考えられる場合でも、Cost Optimization Hubが推奨している方法を選択すれば間違いありません。
コストの最適化に役立つシンプルなツール
現状、Cost Optimization Hubはコスト削減に必要な情報を項目を絞って表示してくれます。大量の情報を処理する必要がないため、AWSの運用に詳しくない人でも理解しやすいでしょう。これからは、今まで以上に多くの人がAWSを利用すると想定されるため、このようにシンプルなツールは重宝すると考えられます。無料で利用できるツールであることから、ひとまず有効化しておいて損はないでしょう。
ただ、詳細な仕組みは公開されていませんが、連携されている情報を踏まえると、独自にデータを収集しているわけではないようです。「AWS Compute Optimizer」など、既存のサービスが収集しているデータを分析し、必要な情報を付け加えてCost Optimization Hubとして表示していると考えられます。そのため、もし対象になっていないと感じるリソースがあるならば「Trusted Advisor」など、別のサービスに連携されているデータも確認し、多方面から必要な対策を検討すると良いでしょう。