公開日:2021年11月29日最終更新日: 2023年2月7日
近年はオンプレミスからAWSなどクラウドへの移行が増えています。一昔前はオンプレミスでサーバーを構築するのが当たり前でしたが、現在はクラウドの利用が主流になっているのです。
クラウドが主流になった今の時代に注目しなければならないのは、クラウドへの移行方法です。システムや各種データをうまく移行しなければ、事業の継続に影響が出てしまいます。
今回はオンプレミスからAWSへ移行する場合、どのようなデータをどのツールを利用して移行すれば良いのかご説明します。
目次 <Contents>
AWSへのデータ移行ツール
最初にオンプレミスからAWSへ各種ファイル類を移行するためのツールを3つ解説します
AWS Storage Gatewayとは
AWS Storage GatewayはオンプレミスのファイルサーバーなどストレージとAWSのストレージであるS3を接続するためのゲートウェイです。その名のとおりストレージ間を接続するゲートウェイだと考えれば良いでしょう。
オンプレミスとAWSでファイル移動を伴う移行を実施する場合、必ずと言っていいほど利用するツールです。
AWS Storage Gatewayには大きく分けて3つのアーキテクチャがあります。
- ファイルゲートウェイ
- ボリュームゲートウェイ
- テープゲートウェイ
1. ファイルゲートウェイ
ファイルゲートウェイはクライアントがネットワークファイルシステムやサーバーメッセージブロックプロトコルを利用して、事前に用意しておいたAmazon S3に接続できるものです。
ファイル共有を利用してAmazon S3内のオブジェクトとして直接データが書き込まれます。オンプレミスからS3にデータ移行する選択肢として特に利用しやすいものです。
ファイルゲートウェイを構築しておくと、オンプレミスとAWS上のデータは非同期に更新されるようになります。データ移行に向けて事前に構築しておくと、S3に必要なデータが格納されオンプレミスからAWSへの移行がスムーズになります。
2. ボリュームゲートウェイ
ボリュームゲートウェイは、オンプレミスのストレージゲートウェイにデータを保持しながらAmazon S3にもストレージを構築するものです。データのアクセス頻度に応じてオンプレミスをプライマリーデータとするか、AWSをプライマリーデータとするかを選択できます。
こちらはボリュームゲートウェイを利用することで、オンプレミスのサーバー環境を最小限にするために利用します。オンプレミスからAWSへのデータ移行ではなく、オンプレミスを中心にAWSにも一部のデータを格納しておきたいケースが該当します。
そのため、オンプレミスを廃止してAWSへデータ移行する際にはあまり活用されず、詳細については割愛します。
3. テープゲートウェイ
テープゲートウェイは、仮想化されたテープにデータを移行するものです。テープを利用したデータ移行はアナログやデジタルを問わず行われていて、AWSにはこれを実現するツールが存在します。
ただ、AWS Storage Gatewayにこのようなツールが搭載されていますが、こちらもオンプレミスからAWSへのデータ移行で利用する可能性は低いと思われます。
テープを利用したデータの移行は長期間のデータ保存などに利用されるケースが多く、オンプレミスからAWSなどクラウドに移行するツールとしてはあまり利用されません。
AWS Storage Gatewayの活用例
AWS Storage Gatewayの事例には「オンプレミスのサーバーに格納されているデータ類をまとめてAWSに移行する」といった使い方が多く見られます。オンプレミスのサーバー上でデータの階層分けなどを済ませておき、その内容をそのままAWSに移行するなどの事例です。
オンプレミスのファイルサーバーでは、ファイルが階層分けされてそれぞれに適切な権限などが設定されている運用が大半です。そのような状態にあるファイルサーバーや各ファイルをAWSに移行して、ファイルサーバーに近い形で利用できます。
AWS DataSyncとは
オンプレミスのサーバーとAWSのストレージ間のデータ移行をスームズにしたり自動化したりするツールです。転送の最適化に対応しているため、データ移行を自動化できるだけではなく高速化もできる仕組みです。
転送の仕組みとしては、ネットワークファイルシステムやサーバーメッセージブロック共有など一般的なプロトコルが利用されます。AWS独自のプロトコルも利用できますが、一般的なファイルサーバーで利用されるプロトコルに対応しているため利用のハードルは低くなっています。
また、転送内容は自動的に暗号化される仕組みを有しているため、セキュリティを高められるツールでもあります。
繰り返しですが、AWS DataSyncの魅力はこれらのプロトコルを利用したファイル転送を自動化できる点です。オンプレミスからAWSへの移行ではデータの量が多くIT運用部隊に負荷がかかりがちですが、AWS DataSyncを利用するとそのような心配は一切なくなります。
AWS DataSyncの活用例
ファイルサーバーには数千や数万のデータファイルが格納されているケースが多々あります。これらを運用や移行の担当者が手作業で移行するのは現実的ではありません。これらの移行を自動化するために活用される例が多く見られます。
ジョブ管理ツールなどが導入されていれば、それらを利用してAWSへデータ移行することも可能です。しかし、AWS DataSyncを利用するとさらに自動化・高速化しやすく、効率の良いデータ移行が実現します。
AWS Transfer Familyとは
Amazon S3やAmazon EFSへのファイル転送を実現するツールです。SFTPやFTPを利用したファイル転送に対応しているため、オンプレミスのサーバーに新規のツールなどを導入することなくAWSへデータ移行をしやすくなっています。
ただ、AWS Transfer FamilyはAWSへの単純なデータ移行を実現するものです。そのため、S3などでデータを適切に管理したり分類したりしなければなりません。特定のサーバーでファイルを管理するような状況とは異なるため、ファイルサーバーの移行とは少々異なります。
とはいえ、S3にデータ移行をすればオンプレミスのファイルサーバーを廃止するなどしてもデータが消失しません。AWSへとにかくデータ移行をしたいならば、AWS Transfer Familyの利用がおすすめです。
AWS Transfer Familyの活用例
SFTPやFTPでのファイル転送が利用できるため、小規模なファイル転送やデータ移行に利用されるケースが多くなっています。オンプレミスのサーバーに手を加えることなくSFTPやFTPは利用できるケースもあり、導入が容易であることから選ばれています。
ただ、FTPはプロトコルの都合からデータ転送に時間を要してしまいます。そのため、大量のデータ転送を伴うプロジェクトでは基本的に採用されていません。
データベース移行に関するツール
続いてはデータベースの移行に関するツールをご紹介します。
AWS Database Migration Serviceとは
リレーショナルデータベースをはじめとして、様々な種類のデータベースをオンプレミスからAWSに移行するツールです。オンプレミスからクラウドに限らずデータベースの移行には何かしらの問題がつきまといますが、AWSのツールを利用すれば問題の発生を最小限に抑えやすくなります。
注目したいのはデータベースの移行を1回で完了させることも、一定期間継続させることもできる点です。オンプレミスのデータが凍結されていれば1回だけの移行で済ませられますが、まだ本番稼働中であれば定期的に差分の同期が可能です。データの凍結を待つこと無く、データベースの移行を開始できる点が魅力的です。
AWS Database Migration Serviceの活用例
各種データベースの移行全般に活用されています。リレーショナルデータベースの代表格であるOracleやSQL Serverはもちろん、オープンソースで開発されているデータベースの移行にも利用例があります。
また、Oracleなどは単純に移行するだけではなく、スキーマーの再作成なども条件次第では可能です。このような作業は手作業で対応するとミスが出る可能性があり、そのような部分を自動化する目的でも利用されています。
仮想マシン移行に関するツール
最後に仮想マシンをミス無くスムーズにオンプレミスからAWSに移行するツールのご紹介です。
AWS Server Migration Serviceとは
オンプレミスのサーバー上にVMware vSphereやHyper-V/SCVMMなどを利用して、構築している仮想サーバーをAWSに移行するツールです。仮想サーバーを丸ごとAWSに移行できるツールであるため、仮想サーバー内に格納されているデータの個別移行などは基本的に意識する必要がありません。
AWS Server Migration Serviceの大きな魅力は、最初に設定をしてしまうと後は自動で仮想サーバーの移行をしてくれる点です。仮想サーバーに関する詳しい知識がなくても、AWSが公開している手順に沿って作業をすれば仮想サーバーの移行が可能です。
本来仮想サーバーを移行するためには、オンプレミスで必要なファイルを取得し、それをAWSに格納しなければなりません。そして格納したファイルからAMIを作成し、それを用いて新しくEC2などのサーバーを構築します。
しかし、AWS Server Migration Serviceはこのような作業が必要ありません。今まで手動で対応していた部分を自動化して、オンプレミスからAWSへの仮想サーバー移行を実現できます。
AWS Server Migration Serviceの活用例
対応している仮想サーバーの移行全般に利用されています。オンプレミスのサーバー上では仮想サーバーが展開されているケースが多く、AWS Server Migration Serviceを利用した移行事例は多々あります。
今までも仮想サーバーの移行には対応していましたが、移行には手動での作業も多くありました。しかし、現在ではAWS Server Migration Serviceの利用で大半の作業が自動化できるため、積極的に利用されるようになっています。
まとめ
オンプレミスからAWSにデータなどを移行するツールについて解説しました。
手動でのデータ移行も可能ですが、AWSのツールを活用すれば多くの作業が自動化可能になります。手動でのデータ移行はミスが発生する可能性があり、できるだけ移行作業は自動化するべきです。
ただ、ツールを利用するためには、データを階層に分けるなど事前の準備が必要となる場合があります。ツールによるデータ移行の自動化は魅力的ですが、事前準備には力を入れておきましょう。